支部長ご挨拶


公益社団法人
日本鋳造工学会関西支部
支部長 金本 範彦

 先の支部総会におきまして、令和4年・5年度の日本鋳造工学会関西支部の支部長を拝命致しました、山川産業株式会社の金本でございます。何分にも、支部の運営に携わることも初めてであり、90周年を迎えた歴史ある関西支部の支部長という大役を務めるには力不足ではございますが、微力ながら精一杯努めてまいりますので、会員皆様方のご協力とご支援並びに諸先輩方のご指導とご鞭撻を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

 私の「鋳造」との出会いは、大学卒業後すぐ入社した弊社で受けた、鋳物および鋳物砂に関する教育が最初でした。大学時代においては全くの畑違いの電気化学を専攻していたため、私自身それまで鋳物というものに全然係わってこないまま就職をしたわけですが、この出会いに、むしろ感動を覚えました。なぜなら鋳物というものが社会の中では、とても重要な要素であり、かつ鋳物なしでは成り立たない産業が山のようにあることに初めて気付いたからです。
 しかし現在では、これだけ重要な鋳物の製品を製造するための鋳造という概念を、少しも知らずして社会に出てくる人たちが多くいること、またそのための学問である鋳造工学という講座や、金属工学科や材料工学科という独立した学科が年々その名称を失い、鋳造に関する各研究分野が規模を縮小されていることをとても危惧しております。
 さらに、その鋳造業を営む工場が3K職場というイメージを持たれ、そこに携わる人材が減少していることや、鋳造部品が極めて重要な機能と性能を担っているにもかかわらず、単なる部品扱いどころか、キログラム単価で表示される材料扱いされかねない、昨今の情勢に心を痛めております。

 弊社は89年前に、鋳造用の砂製造を生業として個人創業で始まりました。その間、鋳造工学の主に成型の分野で、側面から業界に貢献してきましたが、この鋳型を形作るという工程においても、無機化学・有機化学・流体工学など様々な分野の技術が複雑に絡み合っており、これらの技術や理論といったものを伝承してゆくのは、かなり時間のかかることと認識しております。ましてや鋳造全体においては、金属工学や熱力学などさらに多くの学問や技術・技能が必要となり、このような技術の伝承および人財育成は、決して容易なことではありません。
 しかし、あらゆる「モノづくり」を下支えしている、この私たちが育んできた鋳造に関する技術・技能は、今後も我が国にとってなくてはならないものであり、絶やすことなく次世代に繋がなければならないと思います。そしてこの業界のさらなる発展と活性化は、この業界に身を置く我々の最大の責務と考えております。
 2020年から始まった新型コロナ禍により、我々は過去に経験したことのない状況に置かれ、加えて今年2月24日のロシアのウクライナ侵攻によって、世界中が混とんとしており、働き方からエネルギーに対する考え方まで180度変化してしまう昨今の状態の中で、当学会の諸活動は様々な障害に直面してきました。しかし、これも大きく発展する前の「生みの苦しみ」と捉えて、来る関西支部100周年に向けて前向きに取り組んで行きたいと思います。あらためて皆様方のお力添えを心からお願い申し上げます。